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2013年6月29日土曜日

水遣り



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  植物を育てる上で最も重要なのは、その植物の特性をよく知ることと、よく観察することだと思います。ここで書いていることは一般論にすぎないので、この2つができないとあまり役に立たないかもしれません。植物の微妙な変化を見逃さず、その植物の特性に応じた適切な処置をとれるかどうかが成否の分かれ目になることが多々あります。
 ちなみにここで書いたことはあくまでも“自己流”なので、お気付きの点等ございましたらご一報ください。

水やり  
   水やりの基本は、「土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るくらいたっぷり」あ げることです。園芸の本にも、だいたい似たようなことが書いてあります。これは、一般論としては非常に的を得ています。しかし、思いがけない落とし穴もあ ります。水やりは植物を育てていく中で最も頻繁に行う、最も身近で基本的な作業ですが、「水やり三年」と言うように、簡単そうに見えて実はとっても奥が深 いのです。
 私もまだまだ修行中の身ですが、それでも他の方の参考になればいいなと、 水やりについて掘り下げてみました。






水やりの難しさ  


 時と場合によっては水やりが危険を伴うって知ってますか?
 水やりが原因で植物を枯らしてしまうことも少なくありません。
 かと言って、水をやらなければ確実に植物は枯れてしまいます。

 大切なのは、水やりが何で危険なのか、どういうときに危険なのかを充分理解して、適切なタイミングで適切な量の水を植物に供給することです。

 水が足りないと植物はしおれて枯れてしまいます。
 そこまでひどくなくても、花芽が落ちたり、葉が落ちたり、ハダニが付きやすくなったりします。

 水やりが多すぎると、根が腐ったり、場合によっては茎や葉が腐ったりします。
 水をやり過ぎなくても、暑い時や寒い時の水やりは、植物の性質をきちんと調べてからやらないと、たった一度の失敗で植物が腐ることがあります。

 こうした失敗をしないために、水をやる時に注意しなければいけないのは、
  ・水をやるタイミング
  ・一度に与える水の量
  ・水の温度
  ・どこに水を与えれば良いか

などで、これを、
  ・植物の性質
  ・そのときの気温や湿度や風
  ・置き場所
  ・使っている土の状態

などによって調節しなければいけません。これが水やりの難しさの一つだと思います。




【重要】地植えと鉢植えの違い
ここでは鉢植えを前提にして書いていますが、水のやり方を考える上では、地植えとの違いをきちんと理解しておく必要があります。
 何が違うかと言うと、地面はずっと下まで連続して土ですが、鉢植えの土は周囲から隔絶されています。当たり前ですが重要なことです。なぜならこれによって、鉢植えの場合は次のような不都合が出てくるからです。

  ①鉢底に水が溜まりやすい(水が地中に染み込んでいかないため)
  ②乾燥しやすい(地中から水が染み上がってこないため)
  ③熱しやすく、冷えやすい(地上に出ているため)

 ②と③は分かりやすいと思います。でも、①はイメージとしてつかめるでしょうか?非常に重要な部分です。当然、鉢底には排水用の穴が開いていることが前提です。

 感覚的に分かりにくければ、スポンジを縦に持って水をかけてみると良いでしょう。スポンジの上の方は比較的水が抜けていますが、下の方は水気たっぷりです。鉢の中もこれと同じです。特に、目の細かい土を使うと、この傾向が著しくなります。
 したがって、土が乾いてくる前に水を与え続けると、下の方は常に水に浸っていることになり、根は窒息して腐ってしまうのです。






水やりのタイミング


 水やりはタイミングが命です、と言っても良いと思います。また、水やりで難しいのもタイミングだと思います。
 「○○日に1回」など、定期的な水やりではダメです。なぜなら同じ鉢植えでも、天候や置き場所によって土の乾き方がまったく違うからです。必ず実際の土と植物の様子を見ながら水やりのタイミングを判断するようにします。

★タイミングの基本
生育期の水やりでは、「土の表面が乾いたら」というのが基本です。常に土の表面が湿っているようだと、根腐れする恐れがあります。また、土は一般に、鉢 の上の方から乾いてくるので、土の表面が乾いただけなら根までは乾きません。特に乾燥に弱いものや乾燥を好むものは別として、多くの植物はこのタイミング で大丈夫です。
 ただし、上でも書いているように、あくまでも「生育期」限定です。生育に適さない時期は水やりも控えます。

 また、生育期であっても次の場合には特に注意が必要です。土の表面が必ずしも土全体の乾き具合を反映しないことを覚えておきましょう。

  土の量に対して植物が大きい(葉が多い)場合
     同じ条件下では、植物が植えてある鉢の土は何も植えてない鉢の土より早く乾きます。これは、植物が土中の水を根から吸い上げて葉から蒸散しているからです。特に、葉が多く蒸散が激しい植物では、土の中の水は相当な速さで失われます。
 このような場合、朝は土が湿っていても夕方にはしおれてしまうことがあるので、土の表面が乾く前に水をやる必要があります。また、同じ鉢植えでも、植物の生長具合によって水やりの頻度を調節する必要があります。
 
  曇りの日が続いた場合
     土の表面の乾湿は、土の表面から蒸発する水の量と下から供給される水 の量のバランスによって決まります。土全体には充分な量の水が残っていても、強い日差しや風に当たると土の表面は乾きます。逆に曇っている場合は、土の表 面が湿っていても土中の水が少なくなっていることがあります。
 このような状態で急に晴れたりすると、残りの水もすぐに失われ、植物はしおれてしまいます。特に、植物の蒸散が激しい場合は土の内部が乾きやすくなるので注意が必要です。
 また、雨天や曇天が長く続くと、植物が強い光に弱くなっていることもあります。急に晴れると、しおれるだけでなく葉焼けも起きやすいので、梅雨明け等には充分注意しましょう。

  表面の土だけ乾きやすい場合
     鉢植えの場合、装飾その他の目的で表面に化粧砂を置くことがありま す。名前のとおり砂を使うことが多いのですが、砂は乾きやすいため、表面の砂が乾いていてもその下の土は結構湿っていたりします(特に、日差しが強いとき や風があるとき)。表面が乾いたからと言ってどんどん水をやると腐ってしまうことがあるので、特に過湿に弱い植物の場合は注意しましょう。

参考) 土の中の乾き具合を把握する方法
 本などによく書いてあるのは、土に竹串を挿しておく方法です。竹串を抜いて湿り気をチェックします。慣れてくると、竹串の濡れ具合で土の湿り気が分かるようになります。
 また、個人的には鉢の重さでチェックすることもよくあります。鉢や土に重い素材を使っていないことが前提ですが、慣れてくると鉢の重さで乾き具合の見当が付きます。

★水やりの時間帯
水やりは基本的に午前中に行います。夏なら早朝か夜、冬は暖かい午前中の方が良いでしょう。なぜなら夏の暑い時間帯に水をやると蒸れて腐ってしまう恐れがあるし、冬は夕方に水をやると夜間に凍結してしまう恐れがあるからです。
 そうは言っても、夏の日中、乾燥してしおれてきたときは水をやらないと枯れてしまいます。その辺りは臨機応変さが必要です。大切なのは、夏の暑いときや冬の寒いときの過湿を避けることです。







一度にあげる水の量


 一度にあげる水の量は、生育期であれば「鉢底から流れ出るくらいたっぷり」が基本です。ただし、鉢皿等にたまった水は捨てましょう。根が窒息して腐る場合があります。

★過湿に弱い時期の水やり
夏の冬型多肉植物など、特に過湿に弱い時期の植物は要注意です。鉢底から流れ出るほどたっぷりやってしまうと、土が乾く前に植物が腐る可能性があります。かと言って、全く水をやらないわけにもいかないし。
 実は私もたまに失敗するので、どんな水のやり方が一番いいとは言えません。ですが、参考までにいくつか考えられる候補を挙げておきたいと思います。

  ジョウロなどで、上からさっとかける


 簡便な方法で手間はかかりません。夏の夕方や冬の午前中などに、土の表面が濡れる程度にさっと水をかけます。水をやる、というよりは、植物に水をかけて渇きを癒す、というくらいの感覚です。
 ただし、植物の形状を見て、水が溜まりそうな部分があるときは要注意です。水が溜まった部分から腐ったり、凍結したりする可能性があるからです。

  鉢の下部だけ、ちょっと水に浸ける


 比較的簡便な方法です。バケツなどに水を張り、鉢の底の部分をちょっと水に浸けるのですが、長時間浸けておくとどんどん水を吸い上げるので注意が必要です。土の表面まで水が染み上がらない程度に抑えます。
 この方法は、メセン類のように、腐りやすい部分が土の上部にある場合に有効だと思うのですが、このやり方でも腐るときは腐ります。鉢の底で蒸発した水が、植物体で結露するのでしょうか?

  植物から離れた位置に、ちょっとだけ


 鉢の縁など、植物から離れた位置にちょっとだけ水をやる方法です。水差しでやらなければいけないので手間はかかりますが、水が蒸発しても植物の直下には来ないので比較的安全かな、と。
 苦肉の策ですが。

色々書いてはみたものの、やはり日当たりや通風に留意して、過湿や極端な高温・低温を避けることが第一だと思います。







過湿に弱い植物は・・・


 水は必要だけど過湿に弱く根腐れしやすい、という植物は、水はけの良い土に植えるのが第一です。
 水はけの良い土に植えてあれば、基本どおりの水のやり方で問題ないと思います。
 それでも心配な場合は、水をやった後、雑巾などで鉢底から不要な水を吸い取る方法があります。鉢を雑巾の上に置いておけば良いのですが、雑巾の片端を台の上から垂らしておくと、効率よく排水できます。
 また、鉢の形状によって鉢底と雑巾が密着しない場合は、雑巾を押し付けるようにして水を吸い出します。

 乾いた雑巾の上に鉢を置くと、意外とたくさんの水が吸い出されます。この水は、鉢の下の方で滞留している、ある意味不要な(むしろ有害な場合さえある)水です。このように不要な水が滞留してしまう原因は、上記「地植えと鉢植えの違い」をご参照いただければ、と思います。







水の温度


 水の温度は意外と重要で、鉢内の温度と比べて極端に冷たい、または熱い水を与えると、植物に障害が出る可能性があります。
 また、基本的にある程度温かい水の方が吸収が良く、冷たい水は与えても植物に吸収されにくい場合があります。
 以上のことから、与える水の温度は、冬場で10~20℃、夏場で20~30℃くらいがおおまかな目安でしょうか。ただし、植物の性質や気温、日当たり、水やりの時間帯などを考慮して水の温度を調節する必要があります。







水のやり方色々


 水のやり方には色々な方法があって、これをその時の状況や植物の種類によって使い分けていきます。基本は①の水差しですが、注意点がしっかり頭に入っていれば②のジョウロを使った方が楽なことも多くあります。

水差しでの水やり

 一番基本的で確実な水やりの方法です。
 “水差し”とは、ジョウロのような蓮口(シャワーのように水が出る口)が付いていないもので、細い口から直接鉢の土に水をかけていきます。
 水差しの特長は、狙ったところにピンポイントで水を与えられるところです。植物体に水をかけてはいけない場合や、葉が茂っていて上から水をかけても土に 水がうまくかからない場合に重宝します。最も基本的で確実な方法ですが、一鉢一鉢丁寧に水をやる必要があるので手間はかかります。

 
ジョウロでの水やり

 ①の水差しとの区別上、蓮口が付いていることを前提にします。ジョウロでなくても、ホースに蓮口を付けて使用する場合もこれに準じます。
 蓮口が付いていることのメリットは、比較的広い範囲に均一に水を与えられることです。また、水差しに比べて穏やかに水を与えることができるので、次の用途に使います。
  ・種をまく前後の水やり(ただし、まいた種が小さい場合は腰水の方が無難)
  ・植え替え直後の水やり
  ・プランターなど、広範囲に水をやる場合
  ・植物体に水をかけること(葉水)が目的の場合

 ただし、次の点には注意が必要です。
  ・水に濡れると腐りやすいものには不向き
  ・たっぷり水をやったつもりでも水が足りないことがある
 要は、どこにどれだけ水をやるかをコントロールしにくいので確実性に欠ける、ということです。 

 
底面給水

 言葉としては聞きなれませんが、シクラメンの鉢植えなど、底面給水用の鉢に植えて出回っているものがあるので見たことはあるかもしれません。
 仕組みは簡単で、鉢が二重底になっており、上の段に土と植物があって、底からひもがぶら下がっています。下の段に水を入れると、このひもから水が吸い上げられ、上の段の底から水が供給されるというものです。
 この方法だと安定して水が供給されるし、植物が濡れる気遣いも無いので非常に便利な方法なのですが、かと言って万能ではありません。
 水やりの主な目的は、当然植物に水を供給することなのですが、実はそれだけではありません。鉢の上部から水を流すことで、鉢内に溜まった植物の老廃物や 余分な肥料を洗い流すとともに、新鮮な空気を鉢内に送り込む作用があります。底面給水だと、これらの作用が働かないのです。

 
腰水

 腰水とは、鉢底を水につけてしまうやり方です。通常の水やりでは、鉢皿に溜まった水も捨てるのが原則なので、かなり変則的な水やりですが、要所要所で使えるようにしておくと便利です。
 具体的には、微小な種をまいた後で、上から水をかけると種が流れてしまう場合や絶対に乾燥させてはいけない場合に使います。あるいは、ピートモスを多く 含んだ土やミズゴケなどを使った鉢植えで、乾燥しすぎてなかなか水を吸わなくなった場合は、数時間水につけておきます。ただし、長期にわたる腰水は根腐れ の原因になります。

 また、これを腰水と言うのかどうか分かりませんが、バケツなどに水を張り、鉢を一時的に水に浸すこともあります。短時間で均一に水を与えられるし、鉢の上部まで水につければ老廃物の除去や空気の入れ替えにもなります。
 地上部が特に水に弱い植物に水を与える場合は、地表面まで水がしみ上がらない程度に、ちょっとだけ鉢底を水につけて給水することもあります。

 
葉水

 これは普通の水やりとは目的が違います。水気が好きな植物に対して、葉っぱに水をかけて濡らしてあげます。この葉水をするかしないかで、生育が変わってくる植物もあります。
 葉水をすることにより、葉の温度が下がったり、空中湿度が上がったりしますし、葉から水を吸収もします。葉水に液肥を混ぜるのが葉面散布で、即効性のある肥料の与え方です。
 葉水の仕方は、ジョウロで上からかけても良いですし、丁寧にするなら霧吹きを使うこともあります。

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